心理から見た「後悔しない子育てカウンセリング」〜 アスペルガー症候群 〜


アスペルガー障害とアスペルガー症候群と高機能自閉症

まずは、これらについて書きますね。

アスペルガー障害というのは、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル
『DSM−WTR』で使われている表現です。

ところで、診断基準にはWHOの国際疾病分類第10版「ICD−10」
というのもあります。ここではアスペルガー症候群として分類されている
んですね。
では、巷で使われているアスペルガー症候群というのは、そのICD−1
0の定義なのか、と言われると、それがそうばかりではありません。

アスペルガーという言葉が有名になったのは、ウィングという人の論文に
よってでした。
このウィングの枠組みに沿った場合も、アスペルガー症候群と呼ばれてい
ます。

さて、では高機能自閉症というのは何かというと、一般的にはIQが70
以上ある自閉症というのが主な考え方なんですね。
そしてアスペルガー症候群の人は、IQが高い人が多いので、高機能自閉
症とごちゃまぜになり、よく議論されることがあります。
つまり、高機能自閉症の中にアスペルガー障害が含まれるか、またはアス
ペルガー症候群は別物であるか、というようなお話です。

でも、ここではそこまでは深く突っ込まず、とりあえずウィングの言うと
ころの『対人関係がうまくいかない』、『コミュニケーションが取り難い
』『行動・興味・活動パターンが偏狭で、反復的・常動的である』という
特徴がかなり強い人を想定して、とりあえずアスペルガー症候群と言うこ
とにしましょう。

但し、あまりいい加減な定義になってもいけませんので、まずは『DSM
−WTR』のアスペルガー障害の定義を引用します。

【自閉症】

A.(1)、(2)、(3)から合計6つ(またはそれ以上)、うち少なくとも(1)から
2つ、(2)と(3)から1つずつの項目を含む。

(1) 対人的相互反応における質的な障害で以下の少なくとも2つによって
  明らかになる。

(a) 目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人相互
   反応を調節する多彩な非言語的行動の使用の著明な障害
(b) 発達の水準に相応した仲間関係を作ることの失敗
(c) 楽しみ、興味、達成感を他人と分かち合うことを自発的に求めるこ
   との欠如 (例:興味のあるものを見せる、持ってくる、指差すこと
   の欠如)
(d)  対人的または情緒的相互性の欠如

(2) 以下のうち少なくとも1つによって示されるコミュニケーションの質
  的な障害:

(a)  話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねのような
   代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わ
   ない)
(b)  十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著明な
   障害
(c)  常同的で反復的な言語の使用または独特な言語
(d)  発達水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性を
   もった物まね遊びの欠如

(3) 行動、興味、および活動の限定された反復的で常同的な様式で、以下
  の少なくとも1つによって明らかになる。

(a)  強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つ
   またはいくつかの興味だけに熱中すること
(b)  特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかで
   ある
(c)  常同的で反復的な衒奇的運動(例  手や指をぱたぱたさせたりねじ
   曲げる、または複雑な全身の動き)
(d)  物体の一部に持続的に熱中する

B.  3歳以前に始まる、以下の領域の少なくとも1つにおける機能の遅れ
   または異常

(1)対人的相互反応、
(2)対人的コミュニケーションに用いられる言語、または
(3)象徴的または想像的遊び

【アスペルガー障害】

自閉症の亜型 殆どが男児である。言語能力に障害がみられない。
妨害に対して非常に攻撃的である。

--------------------以上DSM−WTR


つまり、DSMでは『言語能力に障害がみられず、攻撃的な自閉症』って
いう感じで定義しているんですね。

でも、これではイマイチわかりにくいと思います。
そこで、もう少しわかりやすい表現にしてみましょう。

・周囲の空気を読めず、一緒に行動したり、場のルールを守ったりが苦手
・相手の言葉からいろいろと察することができず、超マイペースな行動を
 とったりする
・すごくこだわることが多い。

つまりウィングの言うところの『対人関係がうまくいかない』、『コミュ
ニケーションが取り難い』『行動・興味・活動パターンが偏狭で、反復的
・常動的である』ということですね。

そして、もう一つ、よく見られるのは『過敏性』です。音や光にとっても
敏感で、大きな音や閃光などでパニック状態となることもあります。

外から見た特徴としては、目を合わせるのが苦手、もしくは逆に相手の目
を直視し続ける等があります。
また、指や手を使って行う動き(微細運動)が鈍い、つまり不器用なケー
スも多く見られます。

さて、これらの事からわかるように、アスペルガー症候群や高機能自閉症
の人にとっては、【察する】ということがとても難しい為、対人関係で
非常に苦労をします。

周囲の言っている意味や社会的慣習が理解できずにトラブルとなったり、
それによって怒られたり、逆に癇癪を起こしたりして、段々と人付き合い
が嫌いになっていくケースが非常に多く見られます。

また、大人になっても本人としては、うまくやっているつもりでも、実は
周囲が合わせてくれているだけの場合もあり、それにより仕事や結婚がう
まくいかないケースも多々有ります。

したがってまず一番に大事なことは、アスペルガー障害である事、そして
それによっていろいろな問題が発生しやすい事を周囲や本人が知るという
事となります。

そうでないと、『自分勝手』『頑固』『図々しい』などの、間違った評価
を受けてしまい、『聞く耳を持たない』とか『我が儘な言動を治す気が無
い』などと、本人の人格とかけ離れた言われ方をされることが多いんです
ね。


では、どうすればよいのか? これを考えていきましょう

なんと言っても、効果が有るのは行動療法です。
でも、日本は行動療法に長けたカウンセラーが少ないんですよね。
そこで、まずは一般的な方法を挙げてみましょう。

アスペルガー症候群の人は、『文字通りに受け取る』のが特徴です。
だから、皮肉や曖昧な言葉、そして子どもの場合は慣用句(おへそが茶を
沸かす等)が通じません。

従って、周囲は『正確に告げる』ことが必要です。
と言っても、沢山の情報ほ一字一句正確に伝達するというのは、とっても
大変な場合があるので、そういう場合は視覚情報、つまり手順を絵で書く
とか図で説明するとよいでしょう。

また、『手順』や『リスト』等を紙に書き、それが必要な時にすぐ見られ
る場所に貼っておく、などの工夫も有効です。

アスペルガー症候群の子どもは、うまくいかない時に怒りを押さえられな
いことが多いのですが、そういう時はどのようにすればいいかを考え、そ
の手順をカードなどに書き、いつも持たせるのもいいでしょう。

怒りといえば、周囲もアスペルガー症候群の人に怒りを感じる場合も多い
のですが、例えば彼の図々しさは、『暗黙の了解』というものがわからな
い事から、そう見えてしまっているということを知る必要があります。

しょうがないんですね。
『彼』が悪いのではなく、『彼とのコミュニケーションのやり方』に問題
があると、できるだけ理解したいものです。

不器用なことで怒られがちなアスペルガー児に対しても配慮が必要です。
『身体能力的に不器用』なのか、『やり方を理解していないから不器用』
なのかでは、教え方を間違えると大人に対しての不信感が増すばかりです。
ペースややり方も、その子の発達段階に合わせたやり方でやらないと、
反抗ばかりが目につくようになってしまいます。

ここで、アスペルガーの子ども(もちろん大人に対しても同じですが)に
対してどうすればよいかを仁平説子氏と仁平義明氏がとっとも覚えやすい
言葉で提案されているので、それをご紹介します。

『よ・い・こ・せ・い(良い個性)』

よ=予告で安心
い=言って、見せて
こ=こだわる趣味は特技に変える
せ=説教せずに、ルールの説明
い=いつも冷静、いつもおおらか

『あ・ゆ・み・よ・り(歩み寄り)』

あ=焦らずに、子どものペース
ゆ=ゆっくりのんびり、見守って
み=見つけよう、子どもの生きがい
よ=読み取ろう、子どもの心
り=理解することは愛すること



さてあまり長くなっても読むのが大変ですので、まとめに入りましょう。
アスペルガー症候群の人を、所謂『普通にコミュニケーションのとれる人
』にしようと思うと、かなり無理があります。
例えば、阿吽の呼吸が必要な高価なモノを売る営業職や、心理カウンセラ
ーになろうと思っても難しいでしょう。
それよりも、どうしても社会生活においてトラブルが起きることにだけ問
題を絞り、それを何とか覚えて対処するほうが現実的です。

また『こだわる』ということは、1つのものに集中できるという事です。
それを活かして、良いところを伸ばしていくのが大事です。
他にもアスペルガー症候群の人には、優れた能力、例えば記憶力などを持
っているケースが沢山あります。
是非、そちらに注目し、デメリットを上回るように周囲も本人も心がけて
いけば、きっと有意義な人生となります。

その子に合った学習方法を取れば、ぐんぐんと知力や知恵が伸びていく事
も多く、そうなればその知力や知恵で、自分の苦手な部分をカバーしてい
くことも可能になります。

とにかく、アスペルガーや高機能自閉症児を否定したり無視したりする事
により、その子達が【 I am not OK 】 となってしまい、二次障害が起
きることだけは避けたいものですね。


追記

アスペルガーだけではなく、広汎性発達障害のお子さんをお持ちのお母さ
んやお父さんには、その発達障害についての知識不足や周囲の理解の無さ
により、『過剰な自責』『周囲の反応に神経を消耗』『体調不良』な
どの状態になってしまうケースがよくあります。

『不安障害』となり心療内科へ通う親も少なくありません。
悪循環に陥る前に、発達障害に詳しい医師やカウンセラーに相談しましょ
う。

     
参考資料
    
「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する
全国実態調査」文科省 (学校の先生から見た判断基準です。)

<「対人関係やこだわり等」> 

・大人びている。ませている 
・みんなから、「○○博士」「○○教授」と思われている(例:カレンダ
 ー博士) 
・他の子どもは興味を持たないようなことに興味があり、「自分だけの知
 識世界」を持っている 
・特定の分野の知識を蓄えているが、丸暗記であり、意味をきちんとは理
 解していない 
・含みのある言葉や嫌みを言われても分からず、言葉通りに受けとめてし
 まうことがある 
・会話の仕方が形式的であり、抑揚なく話したり、間合いが取れなかった
 りすることがある 
・言葉を組み合わせて、自分だけにしか分からないような造語を作る 
・独特な声で話すことがある 
・誰かに何かを伝える目的がなくても、場面に関係なく声を出す(例:唇
 を鳴らす、咳払い、喉を鳴らす、叫ぶ) 
・とても得意なことがある一方で、極端に不得手なものがある 
・いろいろな事を話すが、その時の場面や相手の感情や立場を理解しない 
・共感性が乏しい 
・周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう 
・独特な目つきをすることがある 
・友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど、友達関係をうまく築け
 ない 
・友達のそばにはいるが、一人で遊んでいる 
・仲の良い友人がいない 
・常識が乏しい 
・球技やゲームをする時、仲間と協力することに考えが及ばない 
・動作やジェスチャーが不器用で、ぎこちないことがある 
・意図的でなく、顔や体を動かすことがある 
・ある行動や考えに強くこだわることによって、簡単な日常の活動ができ
 なくなることがある 
・自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる 
・特定の物に執着がある 
・他の子どもたちから、いじめられることがある 
・独特な表情をしていることがある 
・独特な姿勢をしていることがある

(0:いいえ、1:多少、2,はい、の3段階で回答) 

 

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