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【子どものうつ病】



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子育てに活かせる!『ものの見方、考え方』 その49
【子どものうつ病】
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今回も鷲津先生(名城大学心理学非常勤講師、(同)ベルコスモ・カウンセリング代表)に伺いました。


今回は、最近増えていると言われている『子どものうつ病』のお話ということで…。

「はい。僕のところにも確かに『うつが疑われるお子さん』の問題で相談に来られる方が増えています。実は北海道大学(傳田健三博士)による約2万人の小中学生に対する調査では、小学生1.6%、中学生4.6% トータルで2.6%がうつ病と推定されています。
また、北海道大学の研究チームの小中学生3300人を対象とした調査では、小学生の8%、中学生の23%に抑うつ症状が確認されました」

------小学生の8%といったら、12~3人に1人ですか!
中学生だと4人に1人に抑うつ症状!

「そうなんですよね。また、子どものうつ病の研究が進んでいるアメリカのデータでは、少し古いのですが1998年で300~600万人の子供がうつ状態と想定されています。そして毎年2千人の子供が自殺しているのです。
アーカイブス・オブ・ジェネラル・サイカイアトリーに掲載された全米保健統計センターの研究報告では、躁うつ病だと診断される米国の子供の数が、1994年から2003年までの10年間に40倍の80万人に急増したことがわかりました」

------ということは、現在ではもっと多いと…。

「そういうことになりますね。そして日本では、小学生のうつ病による自殺は2008年で9人 というデータがありますが、アメリカのように増えていく可能性は高いのではないかと言われています」

------やはりストレスが問題でしょうか。

「それもありますが、ストレスを発散する場が少なくなっていることも問題ですね。また親や教師がそれに気づいていなかったり、軽く見ている場合も多いんです。
うつ病は再発性が高いので、早めの対処と継続したケアが大事なのですが、現状はそれとはかけ離れているように思えます。
なお、下記は大人のうつ病の診断基準をもとに作った『簡易版子どもの抑うつ傾向診断表』です。気になる方は試してみてください」



【簡易版子どもの抑うつ傾向診断表】
(Copyright(c)2016 合同会社ベルコスモ・カウンセリング)

1カ月以上続いているものに○をつけてください。


1.落ち込んでいる気分の状態が多い

2.楽しいと思うことや面白いと思うことが殆どない

3.誰に対しても、話すのが億劫だ

4.自分がダメな気がしてあせる感じがよくある

5.いつも疲れている気分がする 元気がでない

6.なにか問題があると自分のせいだと思ってしまう

7.考えがまとまらない 物事を決められない

8.あまり食べたいと思わなくなった

9.よく眠れない、あるいはあまりにも寝すぎる

10.成長過程なのに体重があまり増えない

11.生きているのが面倒くさい

1番から10番までは○を1点、11番は○を2点として合計点を出してください。
合計で6点以上の場合は抑うつ傾向があるので、児童精神科のお医者さんに相談しましょう。
また、小児うつ病の診断基準として、A・ワインバーグらは次のような項目を挙げています。
・子どもが不幸な気分と自己を過小評価する傾向の両方。
・次のうちの2つ以上の症状
 1 攻撃的行動
 2 睡眠障害
 3 人と交わることへの欲求の減少
 4 学校への態度の変化
 5 学業成績の低下
 6 身体的な訴え
 7 いつもの活気の消失
 8 異常な食欲あるいは体重の変化

これらの症状はいつもと違っていて、少なくとも1カ月以上続いていなくてはならないという条件がついていますが、確かに注意が必要な項目ばかりですね。
他にも
・欲しいものがあまりない(減った)
・動作がのろのろするようになった
・身だしなみが雑になった
・夜は元気があるのに午前中は気力が無い(日内変動)
などが注意点です」

------これって、結構当てはまる子が多いんじゃないですか?

「そうなんですよね。そして問題は、子どもは大人と違って、上手く自分の症状を伝えられないということなんです。特にアスペルガーの傾向(コミュニケーションが苦手)を持つ子どもは、自分の感情を表すのが大の苦手ですから、うつ病になりやすいと言えます」

------ところで、どうして子どものうつ病が増えてきているのでしょう?

「前回お話しましたように、やはりストレスが増えていること。そしてストレスを発散できる機会が減っていることが大きいでしょうね。
また、これも大きな要因ではないかと思っているのですが、【期待されること】が増えたのではないでしょうか」

-----期待されること、と言いますと?

「例えば、成績はその最たるものでしょうね。今の子供達は、親や先生、そして塾の先生からまで絶えず期待されているじゃないですか。
他にも【良い子】であることを期待されたり、いろいろな特技を期待されたり、場合によってはAKBとかの人気タレントになることを期待されたり…。
子ども達の話を聞いていると本当に大変だなぁって感じることって多いんですよね」

------なるほど。

「普通の子じゃいけないんですかね。生まれてくる時は、『とにかく健康でありさえすれば』なんて言っていたのにね(笑)」

------ほんとですね。

「そして、その『期待された子ども』が、期待に応えられなくなった時がピンチなんですよ」

------うつにはまり込んでいくということですね。

「そういう事です。ただ、ちょっと付け加えておきますが、期待することが全てダメということではないですよ。『期待すると伸びる』という有名なピグマリオン効果というのもありますし。
ただ、『常に期待されている』とか『過度の無理な期待』、『際限のない期待』とかが問題だということですからね」

------わかりました。気を付けます。(笑)
「ところでこれは補足となりますが、実はよくある話なんですけど『自分が原因で、子どもがうつになったのではないか』と心配されるシングル・マザーの方が多いんですね。それについては大変興味ある論文が有ります。

京都教育大学紀要 No110-2007
  「家族関係と児童の抑うつ・不安感に関する研究-子どもの認知する家族関係」 内田利弘・藤森崇志著より一部抜粋

『今回の調査においては、父子・母子家庭に特有とされるような抑うつ・不安の高さは見られなかった。
それどころか、抑うつ得点に関しては両親がいる家庭の、非バランス群よりも低い結果が得られた。
調査に使用した尺度による影響も考えられるが、父子・母子家庭の子どもの精神的健康性ひいては強さが示されたように考える。
抑うつ状態に関しては、子どもが自分の中に父母の別離を消化できていなければ、抑うつ状態を誘因することも考えられるが、今回の調査においては子どもの中に現在の親子関係が強く内在化していることから、抑うつへの耐性があるのではないかということが推察される』

つまり、離婚してもその後の流れさえうまく整えれば、子どもはうつ病になるどころか、かえって耐性を付けて精神的健康性や強さを身につけるということなんですね」

------そうなんですか。

「ええ。だからあまり自分を責めないでくださいね。また、これはシングル・マザーに限らないんですけど、行き過ぎた『自責』や『自罰』は子どもに良くない影響を与えますから、注意が必要です」

------『わたしが悪かったから』とかですか?

「はい。その『自責』や『自罰』を、子どもはモデリングする、つまりその思考パターンを取り入れちゃうんですよ。そして『自責』や『自罰』はうつの大きな要因なんです」

------つまり、悪循環になってしまうと。

「そういうことです。また、もう一つ問題が有るんですね。うつというのは『怒り』が大きな要因なんです。その『怒り』は、お母さんの『自罰』に乗っかりやすいんですよ。『僕がこうなったのは、おかあさんのせいだ!』という感じに」

------荒れるということですか。

「そうなりやすいんです。お母さんが過去の自分の育て方を100回責めたからって、事態が改善するわけじゃないんです。それよりも『今、どうするか』にエネルギーを注いでいただきたいんですね」

------どうすればいいんでしょう?

「まずは、親が『~べき主義』や『完全主義』になっていないかのチェックです。『~べき主義』とは『~すべきである』、『~ねばならない』という思考ですね。もしそういう言葉をよく使うようでしたら、是非『~であるにこしたことはない』に変えてください。
また『完全主義』というのは、『常に完全を目指す』というだけではなく、『白か黒か思考』、つまりオール・オア・ナッシングの考え方のことを言います。白か黒かではなく【グレー・ゾーン】も考えられるように努めていただきたいです」

------確かに、世の中って白とか黒っていうことより、グレーゾーンの方が多いですもんね。

「そうなんです。これらに気を付けるだけで、すごく子どもが明るく変わっていくんですよ」

------明るくなれば、うつから脱出できるということですね。
 



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