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アスペルガー(自閉スペクトラム コミュニケーションが苦手)

アスペルガー障害とアスペルガー症候群と高機能自閉症

アスペルガー障害というのは、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアル、DSM-5では自閉スペクトラム症という項目に分類されています。 ところで、診断基準にはWHOの国際疾病分類第10版「ICD-10」というのもあります。
ここではアスペルガー症候群として分類されているんですね。

では、巷で使われているアスペルガー症候群というのは、そのICD-10の定義なのか、と言われると、それがそうばかりではありません。
アスペルガーという言葉が有名になったのは、ウィングという人の論文によってでした。
このウィングの枠組みに沿った場合も、アスペルガー症候群と呼ばれています。

さて、では高機能自閉症というのは何かというと、一般的にはIQが70以上ある自閉症というのが主な考え方なんですね。
そしてアスペルガー症候群の人は、IQが高い人が多いので、高機能自閉症とごちゃまぜになり、よく議論されることがあります。
つまり、高機能自閉症の中にアスペルガー障害が含まれるか、またはアスペルガー症候群は別物であるか、というようなお話です。

でも、ここではそこまでは深く突っ込まず、とりあえずウィングの言うところの『対人関係がうまくいかない』、『コミュニケーションが取り難い』『行動・興味・活動パターンが偏狭で、反復的・常動的である』という特徴がかなり強い人を想定して、とりあえずアスペルガー症候群と言うことにしましょう。
但し、あまり漠然とした話になってもいけませんので、まずは『アスペルガー簡易診断表』を作成しましたので、ご覧ください。
(Copyright(c)2016 合同会社ベルコスモ・カウンセリング)

1.目をあまり合わせない。若しくは目を反らさず相手の目を見続ける
2.会話のキャッチボールが出来ず一方的にしゃべる
3.流れに関係ない自分の話をする
4.人の話や呼びかけが聞こえていないような時がよくある
5.かなり年上の人、若しくは年下とつきあい、同年代の友達は少ない
6.「仮に」相手の立場だったらと考えることが難しい
7.相手の話のイントネーションや声のトーン、表情、態度から人がどう思っているかがわからない
8.人に対しての関心をあまり持たない
9.敬語の使い方がヘタ(タメ口になる)
10.比喩や冗談を理解しにくい
11.察するのが苦手
12.自分の考え方は絶対正しいと思い込む
13.自分の感情の気付きや理解が苦手
14.自分の気持ちを上手に表現できない
15.強迫的なところがある
16.ストレートに受け取る
17.強いこだわり傾向
18.予定の変更に強い怒りを覚える
19.変化に対してパニックになりやすい
20.狭い分野を深く掘り下げる
21.記憶力が良い場合が多い
22.反復的な動きが多い

23.決まったパターンで行動しようとする
24.不器用、運動が苦手
25.ぎこちない動きをする
26.光、音、臭い、皮膚感覚などに鋭敏で刺激に弱い
27.声のトーンにあまり変化がない



これらを簡単にまとめると、こういう感じでしょうか。

・周囲の空気を読めず、一緒に行動したり、場のルールを守ったりが苦手・相手の言葉からいろいろと察することができず、超マイペースな行動をとったりする
・すごくこだわることが多い。

つまりウィングの言うところの『対人関係がうまくいかない』、『コミュニケーションが取り難い』『行動・興味・活動パターンが偏狭で、反復的・常動的である』ということですね。
そして、アスペルガー簡易診断表の26にあるように、よく見られるのは『過敏性』です。
音や光にとっても敏感で、大きな音や閃光などでパニック状態となることもあります。

外から見た特徴としては、目を合わせるのが苦手、もしくは逆に相手の目を直視し続ける等があります。
また、指や手を使って行う動き(微細運動)が鈍い、つまり不器用なケースも多く見られます。



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では、どうすればよいのか?


さて、上記にあるようにアスペルガー症候群の人にとっては、【察する】ということがとても難しい為、対人関係で非常に苦労をします。
周囲の言っている意味や社会的慣習が理解できずにトラブルとなったり、それによって怒られたり、逆に癇癪を起こしたりして、段々と人付き合いが嫌いになっていくケースが非常に多く見られます。

また、大人になっても本人としては、うまくやっているつもりでも、実は周囲が合わせてくれているだけの場合もあり、それにより仕事や結婚がうまくいかないケースも多々有ります。
したがってまず一番に大事なことは、アスペルガー障害である事、そしてそれによっていろいろな問題が発生しやすい事を周囲や本人が知るという事となります。
そうでないと、『自分勝手』『頑固』『図々しい』などの、間違った評価を受けてしまい、『聞く耳を持たない』とか『我が儘な言動を治す気が無い』などと、本人の人格とかけ離れた言われ方をされることが多いんですね。


また心理療法として効果が有るのは行動療法応用行動分析です。
でも、日本は行動療法に長けたカウンセラーが少ないんですよね。
そこで、まずは一般的な方法を挙げてみましょう。

アスペルガー症候群の人は、『文字通りに受け取る』のが特徴です。
だから、皮肉やメタファや曖昧な言葉、そして子どもの場合は慣用句(おへそが茶を沸かす等)が通じません。
従って、周囲は『正確に告げる』ことが必要です。
…と言っても、沢山の情報ほ一字一句正確に伝達するというのは、とっても大変な場合があるので、そういう場合は視覚情報、つまり手順を絵で書くとか図で説明するとよいでしょう。
また、『手順』や『リスト』等を紙に書き、それが必要な時にすぐ見られる場所に貼っておく、などの工夫も有効です。

アスペルガー症候群の子どもは、うまくいかない時に怒りを押さえられないことが多いのですが、そういう時はどのようにすればいいかを考え、その手順をカードなどに書き、いつも持たせるのもいいでしょう。
怒りといえば、周囲もアスペルガー症候群の人に怒りを感じる場合も多いのですが、例えば彼の図々しさは、『暗黙の了解』というものがわからない事から、そう見えてしまっているということを知る必要があります。

しょうがないんですね。
『彼』が悪いのではなく、『彼とのコミュニケーションのやり方』に問題があると、できるだけ理解したいものです。

不器用なことで怒られがちなアスペルガー児に対しても配慮が必要です。
『身体能力的に不器用』なのか、『やり方を理解していないから不器用』なのかでは、教え方を間違えると大人に対しての不信感が増すばかりです。
ペースややり方も、その子の発達段階に合わせたやり方でやらないと、反抗ばかりが目につくようになってしまいます。

ここで、アスペルガーの子ども(もちろん大人に対しても同じですが)に対してどうすればよいかを仁平説子氏と仁平義明氏がとっとも覚えやすい言葉で提案されているので、それをご紹介します。

『よ・い・こ・せ・い(良い個性)』

よ=予告で安心
い=言って、見せて
こ=こだわる趣味は特技に変える
せ=説教せずに、ルールの説明
い=いつも冷静、いつもおおらか

『あ・ゆ・み・よ・り(歩み寄り)』

あ=焦らずに、子どものペース
ゆ=ゆっくりのんびり、見守って
み=見つけよう、子どもの生きがい
よ=読み取ろう、子どもの心
り=理解することは愛すること



さてあまり長くなっても読むのが大変ですので、まとめに入りましょう。
アスペルガー症候群の人を、所謂『普通にコミュニケーションのとれる人』にしようと思うと、かなり無理があります。
例えば、阿吽の呼吸が必要な高価なモノを売る営業職や、心理カウンセラーになろうと思っても難しいでしょう。
それよりも、どうしても社会生活においてトラブルが起きることにだけ問題を絞り、それを何とかクリアーできるように対処するほうが現実的です。

また『こだわる』ということは、1つのものに集中できるという事です。
それを活かして、良いところを伸ばしていくのが大事です。
他にもアスペルガー症候群の人には、優れた能力、例えば記憶力などを持っているケースが沢山あります。
是非、そちらに注目し、デメリットを上回るように周囲も本人も心がけていけば、きっと有意義な人生となります。

その子に合った学習方法を取れば、ぐんぐんと知力や知恵が伸びていく事も多く、そうなればその知力や知恵で、自分の苦手な部分をカバーしていくことも可能になります。
とにかく、アスペルガーや高機能自閉症児を否定したり無視したりする事により、その子達が【 I am not OK 】 となってしまい、二次障害が起きることだけは避けたいものですね。


追記

アスペルガーだけではなく、発達障害のお子さんをお持ちのお母さんやお父さんには、その発達障害についての知識不足や周囲の理解の無さにより、『過剰な自責』『周囲の反応に神経を消耗』『体調不良』などの状態になってしまうケースがよくあります。
『不安障害』となり心療内科へ通う親も少なくありません。
悪循環に陥る前に、発達障害に詳しい医師やカウンセラーに相談しましょう。



発達障碍(ADHD)セミナー その1


発達障碍(ADHD)セミナー その2


参考資料

「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」文科省(学校の先生から見た判断基準です)

<「対人関係やこだわり等」>


・大人びている。ませている
・みんなから、「○○博士」「○○教授」と思われている(例:カレンダー博士)
・他の子どもは興味を持たないようなことに興味があり、「自分だけの知識世界」を持っている
・特定の分野の知識を蓄えているが、丸暗記であり、意味をきちんとは理解していない
・含みのある言葉や嫌みを言われても分からず、言葉通りに受けとめてしまうことがある
・会話の仕方が形式的であり、抑揚なく話したり、間合いが取れなかったりすることがある
・言葉を組み合わせて、自分だけにしか分からないような造語を作る
・独特な声で話すことがある
・誰かに何かを伝える目的がなくても、場面に関係なく声を出す(例:唇を鳴らす、咳払い、喉を鳴らす、叫ぶ)
・とても得意なことがある一方で、極端に不得手なものがある
・いろいろな事を話すが、その時の場面や相手の感情や立場を理解しない
・共感性が乏しい
・周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう
・独特な目つきをすることがある
・友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど、友達関係をうまく築けない
・友達のそばにはいるが、一人で遊んでいる
・仲の良い友人がいない
・常識が乏しい
・球技やゲームをする時、仲間と協力することに考えが及ばない
・動作やジェスチャーが不器用で、ぎこちないことがある
・意図的でなく、顔や体を動かすことがある
・ある行動や考えに強くこだわることによって、簡単な日常の活動ができなくなることがある
・自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる
・特定の物に執着がある
・他の子どもたちから、いじめられることがある
・独特な表情をしていることがある
・独特な姿勢をしていることがある

(0:いいえ、1:多少、2,はい、の3段階で回答)



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この内容はNPO日本次世代育成支援協会の鷲津が、愛知大学OCでの講義の内容を元に書いております。
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発達障碍(自閉スペクトラム・アスペルガー)セミナー その3


発達障碍(自閉スペクトラム・アスペルガー)セミナー その4


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