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児童虐待とは


虐待とは、一般的には次のように定義されています。

身体的虐待
ネグレクト(監護を著しく怠る)
心理的虐待
性的虐待

上から多い順になっていますが、今のところ性的虐待は少ないものの、虐待については日本も欧米の後を追っかけている形となっている為、性的虐待が徐々に増えているのが現状です。

これにおいては、日本も欧米のように離婚が珍しくなくなってきて、母の再婚後の継父による性的虐待が増えているのではないかという説があります。
ちなみに、虐待する側の内訳は下記の通りです。

実母 57.3%
実父 29.0%
継父 6.2%

(平成24年 厚生労働省調べ)


なお、児童虐待においては、虐待する側に「しつけ」という正当化がよく見られます。
しかし、しつけというのは「ルール」に基づいて行うものですが、虐待はルールは明確となっておらず、「気分、感情」が優先するものであり、その違いははっきりとさせなくてはいけません。

また、虐待は基本的には「いじめ」の構造と重なり、下記の要件が当てはまります。


権力が上位の者から下位のものへの一方的な不快な言動や処置
受けた方が深刻な苦痛を感じている
それは合理的な範囲を客観的に見て超えている
それは継続的である
それに反撃するのは簡単ではない
正当化される場合が多い

キーワードは「一方的」、「深刻な苦痛」、「継続的」、「正当化」です。

児童虐待が起きやすい要因

虐待が起きやすい要因としては、下記が挙げられます。

親の特質(幼児性 心の問題)
子どもの特質
家庭内システム

親の特質としては、性格の偏りや攻撃性、コンプレックスなどいろいろと考えられますが、やはり「幼児性の高さ」や「鬱への親和性などの心の問題」が多く見られます。
なお、実際にはこの「親の特質」に、その親自身が虐待を受けてそれが繰り返されるという「世代間連鎖」がプラスされている場合が、少なくありません。

虐待の影響

虐待の影響としては下記が挙げられます。

基本的信頼感の欠如
防衛反応
認知の歪み
知力の低下
感情制御の困難、または感情の平板化
リミットテスティング(試し行動)

「基本的信頼感の欠如」については、当協会ホームページのhttp://npo-jisedai.org/ac.html「アダルト・チルドレンをご参照ください。

知力の低下等においては、友田明美福井大学教授の研究で次のようなことが発表されています。

精神疾患には脳の発達段階で負荷がかかることが原因のケースもある
暴言虐待が脳にダメージを与える
(話や言語、コミュニケーションに重要な左脳の聴覚野に変化がみられる)
小児期の過度な体罰は、気分障害や行為障害を引き起こす(前頭前野内側部19%減少例)
精神疾患には脳の発達段階で負荷がかかることが原因のケースもある
暴言虐待が脳にダメージを与える
(話や言語、コミュニケーションに重要な左脳の聴覚野に変化がみられる)
小児期の過度な体罰は、気分障害や行為障害を引き起こす(前頭前野内側部19%減少例)
(以上 論文より引用)


また、今野義孝文教大学教授らは、Perry(1997)の理論から、
「早期幼児期における虐待や無視は大脳機能の不調をもたらし、愛着や共感の機能が低下する。
間脳や脳幹への過剰な興奮は、衝動性や多動をもたらし、暴力に対する閾値の低下をまねく」
と述べています。

ところで、境界性パーソナリティ障害の要因として、幼児の段階での親子間の問題が挙げられています。
因みに、DSM-Ⅳの境界性パーソナリティ障害の要件としては下記が挙げられており、虐待を受けた児童のその後において認められる症状も、多く含まれています。

1 現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力
2 理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係様式
3 同一性障害 著明で持続的な不安定な自己像または自己感
4 自己を傷つける可能性のあるもので少なくとも2つの領域にわたるもの
  (例 浪費、性行動、むちゃ食い)
5 自殺の行動、そぶり、脅かし、または自傷行動の繰り返し
6 顕著な気分反応性による感情不安定性
7 慢性的な空虚感
8 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難
9 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離性症状


また、虐待と父親においては、杉本昌子氏らのこのような研究結果があります。

虐待的子育て行為の経験有 28.1%(439/1563)
「感情的な言葉」が多い
子ども1人 7.7% 2人 47.9%  3人 72.3%
子どもの人数が多くなるほど「叩く」が増える
(3人以上 虐待的子育て経験有の父親 47.1%)

(以上、杉本昌子 横山美江 2015)


ところで、虐待やDVにおいては「どうして逃げないのか」とか「どうして抵抗しないのか」という声がよく出ますが、実はそのような環境におかれてしまうと、そういうことはかなり難しくなってしまうことがわかっています。
それについての有名な理論が、セリグマンの【学習性無力感】です。

セリグマンというペンシルベニア大学院の院生は、犬に電気ショックを与える実験を続けるうちに、その犬達の中にまったく反応をしない犬がいることに気が付きました。
抵抗もせずに、ただひたすら電気ショックに耐えている犬を見て、彼はある事を思い付き、次のような実験をしたのです。

まず、犬を3つのグループに分け、1つ目のAグループはレバーを鼻で押すと電気ショックを止められる箱に入れ、2つ目のBグループは電気ショックを止める手だてが無い箱に入れました。
3番目のCグループは、電気ショックを受けない箱です。

各グループの犬はこれらの箱に入れられ、AとBのグループの犬は電気ショックを与えられたのですが、予想どおりAグループの犬は電気ショックを与えられると鼻でレバーを押し、ショックを回避したのですが、



Bグループは為す術も無く、ただ苦痛に耐えるだけでした。




翌日セリグマンは、今度は真ん中に低い柵がある箱に昨日の犬をいれました。
犬はその柵で仕切られた片側に入れられ、電気ショックを与えられたのです。
柵は低いので、それを飛び越えて柵の反対側に行けば、犬は電気ショックから逃れることができます。

さて、その結果、犬がどのような行動をとったかというと、Aグループの『鼻でレバーを押し、電気ショックを自分でコントロールした犬』は、その柵を飛び越えて、電気ショックを回避しました。



前日、電気ショックを受けなかったCグループの犬も同様です。
ところが、Bグループの『電気ショックに対して為す術が無かった犬』は、ショックを受けても、そのままうずくまって哀れな声を出すだけだったのです。




つまり、Bグループの犬は【無力ということを学習した】のです。
それにより、『コントロールできる』という認知の枠組みが、『動いても何も変わらない』という枠組みに塗り替えられてしまったのです。

この【学習された無力感】というセリグマンの理論は、その後沢山の心理学者の研究により、人間にも当てはまることがわかりました。

このようになった場合、逆らうことも、離れることもできなくなってしまいます。

虐待する親の同伴者

また、児童虐待においてよくあるのが、虐待をする者の配偶者や親族の加担や、見て見ぬふりですが、これについても「人間というものはある環境の下では、人間は予想以上に、残虐なことも行ってしまう」ということを表した実験があります。


スタンレー ミルグラムはナチスがユダヤ人を大虐殺したことについて、こう考えました。

「命令したのは異常だったヒットラーだが、実行したのは『普通の兵士たち』である。人間とは、命令されるとそれほど残虐なことをできてしまうものなのだろうか?」

そして彼は普通のアメリカ人をアルバイトに雇い、実験を行いました。
その内容は次のとおりです。


まず、実験室には生徒役のサクラが電気椅子に座っています。
隣りの部屋には実験に参加した人が、教師役として、電気椅子に電気を流すスイッチ盤の前に座ります。

そして監督者は、そのアルバイトで参加した教師役の人に、生徒が解答を間違えるたびに電気ショックを与えるよう指示します。
スイッチは30個あり、15ボルトから450ボルトまで15ボルト間隔になっており、60ボルトまでは「微弱なショック」、120ボルトまでは「軽微なショック」、195ボルトからは「非常に強いショック」などと、60ボルト刻みに但し書きが書いてあります。

375ボルト以上には「危険-激烈なショック」、435ボルト以上には「×××」というマークが記してあります。

さて、実験参加者は教師役として、生徒が間違えるたびに1ランク(15ボルト)ずつ電流のレベルを上げていくよう指示されます。
生徒役のサクラは程度とともに抗議や苦痛の声をあげ、300ボルト以降は壁をたたいたりして苦痛を表します。
それ以上になってくると生徒役は無反応になります。

なお、実験参加者が電気ショックのスイッチを押すことを嫌がっても、監督者はあくまで続けるように指示します。

さて、結果はどうだったでしょうか?

実験前にミルグラムは大学生達と心理学者にアンケートをとりました。
大学生は最後の450ボルトのスイッチを押す人は3%、心理学者は、大半の人は195ボルトまでにスイッチを押すのを拒否するだろうと予測しました。

しかし、結果はどうだったかと言うと…。


各段階で拒否をした人の割合は次のとおりです。
( < > 内はボルトの強さ )

微弱なショック <15-60>        0人

軽微なショック <75-120>        0人

強いなショック <135-180>       0人

非常に強いショック <195-240>     0人

強烈なショック <255-300>       5人

極度のショック <315-360>       8人

危険-激烈なショック <375-420>    1人

××× <450>(最後まで拒否しなかった) 26人



なんと最後まで残虐な指示(命令)に従ったのは全体の65%に達しました。
もちろん心の中で命令に従うことに対して葛藤していた人も多数いましたが、人は命令されるといかに弱いか、そして残酷な事ができるか、という結果を表したのがこの実験と言えます。


人の心が以下に弱いかを表した実験ですね。

虐待の予防と対処

ではどうすればよいのかですが、まず世代間連鎖という虐待サイクルを繰り返さない為には、社会的な支援が必要であることがわかってきています。
安心して相談することが出来、心の葛藤を減らすことを手伝い、応援してくれる人がいると、徐々にゆとりが出来るのと同時に認知のゆがみは修整されていきます。

また、それにはその親が過去に受けた虐待に思いや意識が囚われている状態から、今、その物語(ナラティヴ)をどう受け止めるか、どう考えるかに移行していくことが重要です。
 
ただ、虐待は虐待している者はそれを隠そうとしますし、虐待されている者はより過大な報復を恐れて他言しないことも多いため、発覚しにくいのが問題です。
したがって、周囲の人の気付きが何よりも重要となります。

福祉事務所や児童相談所への通告は匿名でもOKです。

そして、所員や児童委員は通告したものを特定させるものを漏らしてはいけないことになっていますので、是非早めに通告や通報してください。

また調査の結果、通告が間違っていても通告者が法的に責任を取られることはありません。

現実問題としては、ボランティアとして虐待に遭っている人を助けようと頑張っている人や団体もおられますが、何分にも資金も設備もままならないケースが多いのが現状です。
ですので、今は社会問題として児童虐待大きく取り上げられることが、行政からの資金や施設、人的資源の投入につながります。

虐待は早期発見早期対処が何よりも大事です。

「虐待かな?」と思ったら、まずは児童相談所全国共通ダイヤルの「189」へ電話すること、これが虐待を少しでも減らすことに繋がります。




Copyright(c) 合同会社ベルコスモ・カウンセリング


児童虐待についても学べるNPO日本次世代育成支援協会の「心理カウンセラー講座」はこちら↓
 http://npo-jisedai.org/kouza.htm




好評発売中の「心の本」

「ハートの免疫力UP!」認知療法と解決志向アプローチ
鷲津秀樹著 (お求めはアマゾンで↑)
この本は、このページの筆者が大学の講義(心理学)のテキストとしても使用していた、認知療法や解決思考アプローチをわかりやすく解説した図書です。



講演のご依頼は⇒ https://npo-jisedai.org/kouen.html

子どものうつ病のカウンセリングは⇒ https://bellcosmo.net/service.html



「ネット・スマホ・ゲーム依存の予防と対処」セミナー

愛知県教育委員会 一宮市教育委員会 稲沢市教育委員会 江南市教育委員会 中日新聞後援

写真は5月17日付 中日新聞朝刊

2019年5月12日(日)の「家庭で出来るネット・スマホ・ゲーム依存の予防と対処法」セミナーは、おかげ様で満員となり無事終了いたしました。


児童とスマホの問題についてお話しました

2019年4月3日に東海テレビ「スイッチ」で、幼児や児童にスマホを見せることについてお話しました。






「パワーハラスメント予防研修」の講師を務めました

平成30年12月5日に小学館集英社プロダクションの「パワーハラスメント予防研修」の講師を務めました。 スタッフのマネージメントに携わる方々に熱心に聴いていただきました。



福井県坂井市の「自殺対策人材育成研修」の講師を務めました

平成30年11月28日に福井県坂井市教育委員会主催の「ネット・スマホ依存防止セミナー」の講師を務めました。 沢山の先生や教育に携わる方々に熱心に聴いていただき、また貴重な現場の情報をいただきました。 子どもたちの未来に少しでも貢献できましたら幸いです。



清州保健所の「自殺対策人材育成研修」の講師を務めました

平成30年10月4日(木)に愛知県県清州保健所の職員対象に「自殺対策人材育成研修」が開かれ、講師を務めました。





名古屋市千種区保育会コミュニケーションセミナー

2018年9月7日に名古屋市千種区の保育士さんの研修会で、 「大人と大人のコミュニケーション~保護者対応・職員間の関係づくり~」 という内容の講演の講師を務めました。


中日新聞にネット依存のコメント掲載

2018年6月5日付け中日新聞朝刊の秋葉原殺傷事件の検証記事、「孤立 ネットの虚構におぼれ」において、当協会代表の鷲津が取材を受けた時のコメントが載っています。
(内容は左の記事の画像をクリックしてください)








和歌山県主催のネット依存防止セミナーの講師を務めました。

平成30年1月28日(土)に和歌山県主催の「ネット依存防止セミナー」が開かれ、講師を務めました。
https://npo-jisedai.org/2018wakayama.pdf






2017 名古屋市中村区の養護教員対象セミナー

名古屋市中村区の小中学校の養護教員の研究会で「ネット・スマホ依存防止セミナー」が開かれ、講師を務めました。

2016 小牧市内中学校のセミナー

岩崎中学校のPTAセミナーで「ネット・スマホ依存防止セミナー」が開かれ、講師を務めました。

小牧中学校のPTAセミナーで「ネット・スマホ依存防止セミナー」が開かれ、講師を務めました。

2016 稲沢市広報に掲載されました

稲沢市の「いじめ・不登校対策委員会」主催の小中学校の先生方の研修会で、『ネットいじめ』について講演させていただいた内容が、稲沢市の広報で紹介されました。
https://npo-jisedai.org/inazawa.pdf






2015 稲沢市広報に掲載されました

稲沢市の「いじめ・不登校対策委員会」主催の稲沢市の小中学校の先生方の研修会で、 『ネット・スマホ依存』について講演させていただいた内容が、稲沢市の広報で紹介されました。
https://npo-jisedai.org/27inazawa.pdf







「ネット・スマホ依存症セミナー」ビデオ(一部)



「ネット・スマホ依存症セミナー2」ビデオ(ダイジェスト版)
■学校関係の講演実績の例

・国分寺青年会議所 ~大人と子供のコミュニケーション~
・私学をよくする愛知父母懇談会 ~中ブロック総会の記念講演~
・名古屋市子ども青少年局(名古屋市保育士)~保育リスクマネジメント研修~
・安城市 ~子育てに活かせるものの見方、考え方~
・稲沢市教育委員会 ~ネット依存に陥らない為に~(2016、2017)
・名古屋市西生涯学習センター ~子育てセミナー~
・名古屋市北生涯学習センター ~子育てに役立つ心理学~
・子育てかもめ応援団 ~「うまくいかない」を「うまくいく」にするには~
・名古屋市港区小中学校PTA会長セミナー ~絆をつなぐPTA活動~
・東区小中学校PTA会長セミナー
・中区小中学校PTA会長セミナー
・千種区小中学校PTA会長セミナー
・名古屋市守山中学校PTA ~子どもと上手な付き合い方~
・小牧中学校 ~スマホ・ネット依存症の対処法~(2016、2017)
・小牧市光が丘中学校教職員 ~生徒とのコミュニケーション~
・小牧市岩崎中学校PTA ~子育て・スマホ依存~
・名古屋市有松中学校PTA ~我が子の本当の味方になるには~
・名古屋市見付小学校PTA ~親が伸びれば子どもも伸びる~
・名古屋市伝馬小学校PTA ~子どもの心を育み親子のきずなを深める~
・名古屋市福田小学校PTA ~子どもとのコミュニケーション~
・名古屋市福春小学校PTA ~子供とのコミュニケーション~
・名古屋市東海小学校PTA ~親子コミュニケーション~
・岩倉市北小学校PTA ~子どもを伸ばすコミュニケーション~
・熱田区小中学校PTA会長セミナー
・名古屋市守山東中学校PTA~やる気と可能性を引き出すコミュニケーション~
・名古屋市中村区養護教諭研修会 ~スマホ・ネット依存対策~

他多数 Copyright(c)2014 NPO日本次世代育成支援協会



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