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「劣等感=コンプレックス」ではない


コンプレックスというと、劣等感のことだと思っておられる方も多いのですが、実はこの2つは全く同じではありません。

劣等感というのは、字のごとく「自分は劣っている」という感情です。
そして、それは意識されているということになりますよね。

ではコンプレックスはというと、これも自分の『劣っている部分』についての悩み、と思っている人が多いようですが、実は『無意識に感じている複雑な思い』と言ったほうがいいんですね。

厳密にいうと、『劣っているところ』だけに生じる無意識の複雑な思いだけではなく、まるで『優越感のようなコンプレックス』だってあるのです。
ただ、一般的には『劣っている』という無意識の複雑な思いについて、よく使われている場合が多いので、ここでは主に『劣等コンプレックス』について話を進めていくことにします。


さて、わかりやすく例を挙げて考えてみましょう。

例えば『僕は頭が悪い』という思いについて…。

劣等感の場合は、大体は例えば学生なら、学校での平均よりも勉強ができない場合に生じることが多いのではないでしょうか。
そして、それは本人がしっかりと意識しているわけです。

ところが、例えば「自信を持てない」という悩みで、こういう話をしに来た人がいるんですね。

「僕は頭が悪いんです。だから親が望む大学へ行けなくて…。でもしょうがないので、行けるところへ進んだのですが、それ以来親父の目を真っ直ぐ見れないんです」

「そうなんですか」と話を聴いていたら、なんと今行っているのは超難関校の私学なんです(ちなみに、筆者が落ちた大学でした)。
なんのことはない。兄が東大で、いつもその兄と比較されて育ってきたそうなんですね。

この場合は、一応意識には多少持っているものの、無意識の内にかなりの劣等コンプレックスがあるのではないかと考えられます。

つまり、劣等コンプレックスというのは『劣っているとは限らない』んです。


さて、この例でもおわかりのように、例えば「頭が悪い」というコンプレックスがあったとして、その場合その人は『何に比べて』、『どれだけ劣っている』か、つまり劣っていると判断する【基準】を、あまり合理的には考えていないことが多いんですね。


『気になる部分』がコンプレックスになるということです。
逆に言うと、気にならなければ比較してもコンプレックスにはならない場合も多いんです。

例えば、アインシュタインより頭が悪いからといって、悩む人は殆どいません。
白鵬より相撲が弱くっても、別に平気なはずです。

…という事は、自分と比較する基準が高すぎる場合は、劣等コンプレックスは生じません。
どちらかと言うと、周囲の自分と近いゾーンで比較しているはずです。

しかも、人はこの基準を親や周囲に勝手に設定されたり、自分で設定している場合が多いんですね。


考えてみると、結構おかしな話で悩んでいるんですよ。
自分で勝手に非合理的な基準を設定し、それよりも低いと【劣等感】、高いと【優越感】を感じて一喜一憂しているという事ですから。

基準をどこに設定しているのか?
設定したのは誰で、自分がその基準を適正と判断した根拠は何か?
これらをじっくりと考えてみると、「あれっ?」って思える部分が出てくるはずです。


実際、何に対して何を基準とするかにおいて、勘違いしている人って本当に多いんですよね。

例えば学校で使う偏差値がそうです。
あれは、記憶力や計算能力とかを比較する基準であって、人間性とか信頼性とは関連が有りません。
なのに、偏差値を基準として他人を【信じる】人っているでしょ?

以前、一流と言われている某大学の学生が殺人事件を起こしたときに、「あんな良い大学へ行っているのに、どうして?」という声が沢山上がりました(メディアでもそんなことを書いていたところがあったのには驚きました)。

その大学は確かに、入試の際にすごく高い偏差値をクリアしないと入れないけど、その大学の入試には『人間性のテスト(やさしさのテスト)』とかは無いんですよ。 入試の偏差値で『やさしさ』を計るなんて、体重をモノサシで計っているようなものです。
100m競争で、早い人から順に頭が良いって言ってるのと同じような事なんですよ。

そんなおかしな話なんかに巻き込まれて、劣等感なんか持ってしまったら悲劇ですものね。


さて、人間は【理想自我】というものを持っています。
『自分はこうありたい』 とか 『自分はこのようになりたい』 というのがそれです。
これは、適度であれば結構なモノなのですが、それこそこれに【執着】してしまうと大変なんですね。

その【理想イメージ】から、現実の今の自分を引き算して、「自分が嫌い」なんて言っていてもしょうがないんじゃないかと思うんですけど。(下図)



そうではなく、それは将来における理想として、目標として一段ずつそれに向かって進んでいくというなら、それはとっても素晴らしいこととなります。(下図)



僕はよく『人に好きになってもらうには、まず自分が自分を好きじゃないと…』って言っています。
自分でも嫌いな自分を、人に好きになってくれというのは無理がありますからね。

ところが、勝手に自分の理想のイメージを想像して、それに現実の自分を比較して「自分を好きになれない」とか言って、挙句の果てに「どうして自分は人に好かれないんだろう」とか悩んで暗くなって、そして「あいつは暗いから」とか周囲から敬遠されたりして…。

その、「自分を好きになれない」というのは、自分を低く見ているということですけど、『何』に比べてなのかは、考えてみた方がいいでしょうね。

もちろん、理想の自分と比べるということだけではなく、他の人と比べて劣等感を持つ場合もあるでしょう。
平均という合理的な基準から比べて、低い場合もあると思います。
例えば、部分部分において劣等感を持ったり、自己嫌悪に陥ったりするという事は有ってアタリマエです。
人並みより背が低い、というのがわかりやすい例ですね。

でも、次の文を読んで、どう思われますか?

『日本人はフランス人よりもムードが無く、イタリア人よりも陰気である。
しかも、インド人よりも数学に弱く、ザイール人よりもマラソンで遅い。
その上ユダヤ人よりも商売がヘタで、アメリカ人のように前向きではない。
なんと言っても悲しいのは、アラスカ人より寒さに弱いくせに、なんとエチオピア人より暑さに弱いのだ。
よって、日本人は世界で最も情けない人種の1つである』


これを僕が言うと、『馬鹿馬鹿しい!』って笑う人が多いのですが、実は結構同じような考え方をして悩んでいる人って多いんですよ。

さて、劣等感で悩んでいる人は沢山います。
でも、そういう方々の中には、その反対に優越感を本人も気付かずに持っている場合が有ります。
ということは、劣等感と優越感は同じ袋の中に有ることが多いということなんですね。

先ほど言ったように、劣等感にしろ優越感にしろ、どこかに自分で基準線(合格点)を引くことで発生します。
その線以上なら優越感を抱き、その線以下なら劣等感に苛まれるというわけです。

…ということは、劣等感とか優越感に捉われない人は、あまり物事に厳格な、もしくは高邁な基準線や合格点を設定しない人と言えるんですね。


ところで、劣等感で悩んでいる人が特に気を付けなくてはならないのは、なにか一つに劣等感の対象を集中させ(例えば鼻の形が悪いとか)、そのせいでいろいろな事がうまくいかないと思い込み、深みにはまっていくことです。

整形手術をして鼻を高くしたら、きっとモテるようになるだろうし、きっと就職もうまくいくだろうし と思い悩むのは勝手です。
でも、整形手術をしたら、『鼻が高くなる』だけなんですね。

そうではなく、問題は自分の『下に見られるのが嫌』だと感じている【自分の心の部分にある】かもしれない、と考えると心が楽になるかもしれません。
自分で基準線を引き、そして苦しむ…。
理屈では馬鹿馬鹿しいとわかるのですが、ついついやってしまいがちな事ですね。


また、人から批判されて、落ち込んで劣等感が生じてしまう時がありますよね。

例えば人から「君は自分勝手だ!」と言われて、「わたしは自分勝手な人間なのだから人に好かれない」という劣等感が生じたとします。
でも、本当にそうでしょうか?
ちょっと例を挙げてみますね。

【通らないワガママ】ばかり言う人は<自分勝手>と言われます。

では【通るワガママ】を言う人は?


これは<自由奔放>って言われるんですね。


次に…。

【許せないワガママ】を言うと<大人気ない>と言われます。

では【許せるワガママ】を言う人は?


これは<少年の心を持つ人>って言われるんです。


おわかりいただけましたか?
『わたしは自分勝手な人間なのだから人に好かれない』のではないんですね。

『その相手にとって、【通らないワガママ】や【許せないワガママ】を言ったから、勝手と言われる』んです。

つまり【あなた】がいけないのではなく、【あなたの表現方法】や、勝手な思いをどこまで表現するかの【判断力】がイマイチな場合だって結構あるんですよ。

これらは【技術】の問題ですよね。
つまり上手な人を真似して練習すれば上達する、という事です。


ところで、カウンセラーというのは、『クライアントの心の鏡になれ』とよく言われます。
クライアントの心を、歪みや曇りなどないように写し出し、クライアントに『気付き』をもたらすという事でしょうね。

…と云うことは、当然カウンセラーはまずは自分の心を、歪み無く曇りもなく見つめることができなくてはなりません。
ここが難しいんですよね。

歪み無く曇りなく心を観ると、見たくない嫌なところが一杯出てくるんです。
例えば、人を褒めている自分だって、『いい人に見られたい』とか、『自分が得をしたいから褒めている』のかもしれません。
思わず「パス!」って、見ないで通り過ぎたいところがいくらでも出てきちゃうんですね。

じゃあ、どうすればいいのか。

その見たくないものをパスしたら、それはそれでいつまで経っても『気づき』は生まれないし、かと言って見たくないところを見てはそれを責めていたら、それこそ鬱になっちゃいます(うつ病の人に自責概念や自罰思考が多いというのは、この問題です)。

だからこそ、【しょうがない】という言葉が大事なんですね。
我々は神様や仏様じゃないんだから。

ところで、僕がこの『しょうがない』という言葉を使うと、「しょうがないで済ませるのは、逃げることになりませんか?」という質問をされることがあります。

確かに、「しょうがない」と言って、物事に向き合わずに逃げてる人もいます。
でもそれは、『自分の心を見つめずに「しょうがない」でフタをしちゃう人』なんですね。

そうじゃなしに、『しっかりと心を見つめて、そのうえで「しょうがないものはしょうがない」と許す』のが大事だと僕は思うんです。
そして、もし今まで見たくないからスルーしていた自分の嫌なところを、笑いのネタにできるようになれたら最高なんですけどね。



さて、まとめとなります。

冒頭の話に戻ってみましょう。
人は、自分の造った理想自我と比較して、自己嫌悪したり劣等感を抱いたりすることが多いんですね。

そして、自分では自分を『馬鹿にしている』くせに、人に馬鹿にされると怒りが湧いてきたりして…。
自分で勝手にいいトコ取りの理想の自分を作成し、それと現状の自分を比較して落ち込み、自信を無くし、自信の無いところへ人から何かを指摘されては、また自信を無くしては落ち込んでいるワケです。

もし、その負のスパイラルにはまりこんでしまったら…。
まずは現状の自分に対して『だってしょうがないもんね』と笑って言えることが大切です。

泣いて言ってちゃダメなんです。

どうしてか。
しょうがないものはしょうがないから。



悩んでいる暇が有ったら、その時間に自分の長所を探しましょう。

長所がない?

やったことがないことって一杯あるでしょ?(例えばリケンベっていう楽器を弾いたことあります?)

…ということは、やったことがないから出来ないということが一杯あるっていうことです。
だとしたら、やったら出来ることだって幾つもあるんじゃないですか?

そして、その中に長所があるかもしれません。

それを可能性って言うんですけどね。

人の魅力っていうのは【長所-短所=?】という式の『?』なんですよね。

この、『?』を大きくすることが大事なんです。

これが大きくなったら、その劣等感をいだいているものは、「しょうがない」から「それがどうした!」に変わっていきます。

いかがですか?
「それがどうした!」を目指していきませんか?





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ZIP-FM(77.8)にゲスト出演しました。平成30年1月17日(土)

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出演:Cellchrome(セルクローム)
「Cellchromeが今夜調べてみました」
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碧南市の医師会、歯科医師会、薬剤師会と行政が一体となった「碧南市健康を守る会」の総会で、代表の鷲津秀樹が講演させていただいた内容が、碧南市の広報で紹介されました。
http://npo-jisedai.org/hekinan.pdf






稲沢市広報に掲載されました

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http://npo-jisedai.org/27inazawa.pdf




■講演実績例

愛知県動物保護センター
 「職員コミュニケーション研修」
三重大学
 「教職員対象にハラスメント防止」
田原青年会議所
 「企業コミュニケーション理論」
国分寺青年会議所
 「大人と子供のコミュニケーション」
日本ポスティング協同組合
 「全国組合企業管理者研修会」
独立行政法人雇用・能力開発機構
 「関東地協セミナー」
上尾商工会議所青年部
 エゴグラムとコミュニケーション

碧南青年会議所
 「人間関係の達人になる方法」
南山経済人クラブ
 心理から見た「好きな人にモテる方法」

三重県司法書士会四日市支部
 「メンタル・ヘルスセミナー」
不二サッシ
 「心理から見た「安全」について」
長崎市介護支援専門員連絡協議会
 「聴く力・伝える力」
ゲオ ビジネスサポート
 「コミュニケーションセミナー」
日本易学連合会大阪支部総会
 「深層心理学」
碧南市健康を守る会
 「メンタルヘルスとコミュニケーション」
愛知県農林水産事務所
 「心理を知って自分を磨こう!」
名古屋市
 「保育リスクマネジメント研修」
公益社団法人 日本易学連合会大阪支部
 「深層心理」  他多数




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