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愛着(アタッチメント)障害とは

愛着(アタッチメント)障害という言葉が最近よく聞かれます。

では、まずは愛着障害とはどういうものなのかを考えてみましょう。

精神科医が診断の基準とする際に、米国精神医学会が発行しているDSMというのがあります。
その最新版DSM-5にも愛着障害が取り上げられているのですが、それを噛み砕いてみると、下記のようになります。

まずは愛着障害は2つのパターンに分けられています。
1つ目は反応性愛着障害(RAD)。

これは、親に抑制されて感情を出せなくなった子どもが、その後一貫して「どんなに辛い時でも滅多に安らぎを求めないし、苦痛に反応しない」という行動パターンを取るというケースですね。

そして、次のうち2つ以上に当てはまるかどうかが大事となってきます。

・他人に対して最小限のコミュニケーションしか取ろうとしない
・ポジティヴな感情が制限されている
・親が威嚇的ではない場合でも、イライラや悲しみや恐怖を感じることがあった

更に、その子が欲する愛情をもらえなかった(ネグレクト)、または親の離婚や育児放棄などで頻繁に育てる人が変わる、または愛情を欲しくてももらえない普通ではない状況で育った(養育者が極端に少ない施設等)というケースです。


2つ目は脱抑制型対人交流障害(DSED)です。

これは、下記の2つ以上に当てはまるかどうかをチェックします。

・見知らぬ人とのコミュニケーションが平気
・度を越した馴れ馴れしさ
・親や養育者に対してドライである
・親しくない大人にでも平気でついていく

そして、1つ目の反応性愛着障害と同様に、その子が欲する愛情をもらえなかった(ネグレクト)、または親の離婚や育児放棄などで頻繁に育てる人が変わる、または愛情を欲しくてももらえない普通ではない状況で育った(養育者が極端に少ない施設等)というケースです。


しかし、精神医学的な話はともかく、ここではもっとわかりやすく考えてみましょう。

簡単に言うと、その人が子ども(幼児)の時に、親若しくはそれに替わる保護者からから愛されなかった、かまってもらえなかった、非常に厳しく育てられた場合が、愛着障害となってしまう場合があるということですね。

「場合がある」という書き方をしたのは、親から愛されなくても愛着障害の特徴を持たない人もいるということです。

つまり、環境だけではなくその人の特性(持って生まれた性格)も関係するわけですね。
繊細な人、感受性の強い子どもほど、問題が大きくなるとも言えます。


さて、ここでは日本次世代育成支援協会に相談に来られた方々の特徴から、簡易診断テストを作ってみました。

まずはその『愛着障害ではないかと悩む人のパターンチェックリスト』をご覧ください。

愛着障害ではないかと悩む人の簡易診断テスト
(この著作権は合同会社ベルコスモ・カウンセリングに有ります。無断複製や無断使用はできませんのでご注意ください)


当てはまるものには〇、多少あてはまる場合は△、そうでない場合は×をつけてください。


1.自信が無い
2.見捨てられ不安が強い
3.自分は自分、人は人と割り切るのが苦手
4.察してくれることを切望する
5.低い自己評価
6.情緒不安定
7.感情のコントロールが上手くいかない
8.人にどう思われるかがとても気になる
9.ゆとりがない時が多い
10.子どもっぽいところがある
11.親しい人に過度な要求をしたり、要求がエスカレートしたりする
12.親しい人に対しては切れやすい
13.批判、否認、または拒絶に対する不安が大きい
14.好かれていると確認できないと、人との関係に深入りしない
15.人から褒められても素直に喜べない



いかがでしたか?
〇は2点 △は1点 ×は0点として、合計点を出してください。

24点以上は傾向有り。20点以上は予備軍となります。

なお、1から9までの項目はアダルト・チルドレンの傾向と重なります。


なぜ愛着(アタッチメント)障害ととなるのか

ボウルビィという心理学者は、幼児にとってとても大事なことは「港」があることだと考えました。

幼児は1歳あたりから、いろいろと好奇心にかられてチャレンジを始めます。
でもそれは、例えば幼児を船に例え、チャレンジを航海と例えると、いざという時に帰る港があればこそ、なんですね。

つまり、お母さんがしっかりと港の役割をしてくれているからこそ、一人でチャレンジできるわけです。
これをウィニコットという小児科医は「二人いるから一人になれる」と表現しました。



その港は3つの意味があります。

安全である場所

安心できる場所

そして、いつでも帰ることができる場所



だから幼児は、冒険して何か怖いことがあったらお母さんのところにあわてて帰り、お母さんという港で「人は信じられるものだ」という基本的信頼感と、「僕は愛される存在だ」という自己肯定感を身に着けていきます。



ところが、幼児が冒険して何か怖いことがあり、お母さんのところにあわてて帰ったら、なんとお母さんがいなかったとしましょう。 「港がない」という事態ですね。


すると幼児は「人は信じられない」という疑いの心と、「僕はいなくても構わない存在だ」という自己否定感を身に着けてしまいます。

これが3歳までにあると、かなりのダメージを受けててしまうんですね。


基本的信頼感

ところで、自らを愛着障害アダルト・チルドレンではないかと言われるクライアントに、上記の基本的信頼感についてのお話をすることがよくあります。

心理学者エリクソンの、発達段階論というとても有名な理論があるんですね。
これは、乳児期から老年期までの各段階において重要である事を表しているのですが、まず最初の乳児期(0歳~1.5歳)においては、≪基本的信頼vs不信≫という構図をエリクソンは考えました。

乳児って不快なことがあったり、不安になったりすると泣きますよね。
でもその時に、母親の愛情を感じられれば、不安や不快は【安心】に変わります。
そして、そうやって愛情を感じるごとに、【人(母)を信頼できる力】とともに『自分を愛してくれる人がいる』という【自分の存在を肯定できる力】が育っていきます。
これを基本的信頼感(basic trust)と云うわけですね。

しかし逆に、泣いても誰もかまってくれないし愛情も感じられないということが続くと、人に対して信頼はできないワ、自分というものに自信は持てないワで【不信(basic mistrust)】が心の中に根づいてしまいます。
つまり、ここの段階で躓いちゃうと、『相手を信じる』という力、キャパと言ってもいいですが、それが育っていない為に、例えば恋愛なんかではお互いに苦しい思いをしなくちゃいけなくなるんです。
何かあると、すぐに「あの人はわたしを愛していないのじゃないか」とか「わたしは愛されない人間じゃないか」ってなっちゃうんですね。

子どもの頃に虐待やネグレクト(育児放棄)を受けたり、親が離婚してシングルマザーとなり、生活費を稼ぐのに手いっぱいになって子育てが出来ない場合、また再婚して新しい夫に気を使って子どもにやさしくできないという環境だったケースでは、この基本的信頼感は身に付きません。


さて、ここからが大事なのですが、例えば親が愛情を持ってかまってくれたとしても、それは子どもの期待に【100%】沿うものではないですよね。
お母さんだってお母さんの都合があるだろうし、例えば風邪をひいていたとしたら、風邪を移しちゃいけないからかまってあげられない…。
家事をやっている時は遊んであげられないし、お金がなければいくら子どもが欲しがっているおもちゃがあったって、そうそう買えるものでもありません。
つまり、子どもの欲求が100だとして、それに60くらいしか返せなくても、それはそれでしょうがないわけです。



そして、そういうことを乳児から幼児と育っていく段階で、子どもも段々とわかってきます。
『お母さんは自分に愛情を持ってくれているんだけど、自分の期待に100%応えてくれるわけにはいかない』って。

つまり、「まぁ、こんなもんだ」と理解するわけですわけですね。

ところが厄介なことに、あまりかまってくれないお母さんのケースで、子どもの100%の期待に対して例えば6%しか返ってこなかったらどうなるでしょう?



「まぁ、こんなもんだ」を知らずにその子は大きくなっていくんですね。

でも実はそういう場合って、そのお母さんもあまりかまってもらえず育ってたりして、『愛し方』を知らなかったり、『愛する』余裕がなかったりっていうケースが多いんですよね。



だから、実はお母さんに『愛してもらえなかった』というよりは、お母さんに『【愛】の在庫があまりなかった』ってことなんです。
少し愛すると、すぐに【売り切れ】になっちゃうんですよね。
…で、「また今度」とか言われちゃって。

ミもフタも無い話と思われるかもしれませんが、実際はそんな話なんですよ。


でも、その場合においてもその子どもには「愛してほしい! 100%応えてほしい!」という願いは消えはしません。
…というか、かなえられなかっただけ、逆に無意識の中に強く切望した思いだけは残っているんですね(これを≪未完の思い≫と云います)。



そして、その子どもは「100%応えてほしい!」という思いを持ち続けて、大人になります。
そして、ぶつけるんですよ。
その≪未完の思い≫を恋愛相手に。

もちろん100%なんて、誰でも無理ですよね。

だから恋愛は破綻します。

これが上記の簡易テストの、
11.親しい人に過度な要求をしたり、要求がエスカレートしたりする
12.親しい人に対しては切れやすい
ということなのです。

そしてその人は【不信】とか【自己否定】を一段と強化していくんです。
思いっ切り悪循環にはまっちゃうわけですね。

実は『自分は愛着障害だ』と思っている人には、このパターンって多いんです。




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どうすればよいのか


さて、じゃあそういう人はどうしたらいいんだ? となるわけですが、答えとしては『この構造をしっかりと理解すること』となります。
つまり「そんなことなのか」流れを理解すること(この言葉ってカウンセリング中にクライアントからよく出てくる言葉なんです)です。

そして、例えば恋愛相手が60%とか70%しか期待に応えてくれなくても、「まぁ、こんなもんだ」と理解すること。

いくら親を責めても、たいていの場合は親は否定しますし、時間の無駄になることが多いんですね。

だとしたら、得られなかった「愛」を、これからどうやって、そして誰からもらうかを考えたほうがいいに決まっています。

「大事にしてもらう」ことが多くなればなるほど、相対的に哀しみ淋しさは減っていきます。

ただ、その為には、まずしっかりと自己肯定感を持つことが大事ですね。

その為には、やはり認知行動療法や実存セラピーが効果があるのではないかと思います。
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『合理的な自己評価』を持てるようになるには、やはりしっかりとした(ただ褒めたり共感したり受容するだけではない)カウンセラーにカウンセリングを頼むのが、近道ではないでしょうか。

自分の人生は、自分の為に有るのですし、その人生の意味をしっかりと考えないといくら優しい言葉を掛け合っていてもどこかで抜け切れないのではないかと思いますが…。




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この内容はNPO日本次世代育成支援協会の鷲津が、愛知大学OCでの講義の内容を元に書いております。
著作権はNPO日本次世代育成支援協会にありますので、無断使用、複写等はできません。ご了承ください。
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中日新聞にネット依存のコメント掲載

2018年6月5日付け中日新聞朝刊の秋葉原殺傷事件の検証記事、「孤立 ネットの虚構におぼれ」において、ベルコスモ・カウンセリング代表の鷲津が取材を受けた時のコメントが載っています。
(内容は左の記事の画像をクリックしてください)




ZIP-FM公開生放送にゲスト出演

平成30年3月29日にZIP-FM(77.8)公開放送にゲスト出演しました

番組名:「SMILE HEART BEAT」
パーソナリティ MISATO
 

 

和歌山県主催のネット依存防止セミナーの講師を務めました

平成30年1月28日(土)に和歌山県主催の「ネット依存防止セミナー」が開かれ、講師を務めました。
https://npo-jisedai.org/2018wakayama.pdf






ZIP-FM(77.8)にゲスト出演しました。平成30年1月17日(土)

番組名:Midnight chrome(ミッドナイトクローム)
出演:Cellchrome(セルクローム)
「Cellchromeが今夜調べてみました」
~どうして人は面倒なことを先延ばしにするの?~


 

 

稲沢市広報に掲載されました

稲沢市の「いじめ・不登校対策委員会」主催の小中学校の先生方の研修会で、『ネットいじめ』について講演させていただいた内容が、稲沢市の広報で紹介されました。
https://npo-jisedai.org/inazawa.pdf






名古屋テレビの報道番組「UP!」でコメントしました。

名古屋テレビの報道番組「UP!」で、ネット・スマホゲームの問題点についてお話しました。(2016.8.25)




名古屋市「保育リスクマネジメント研修」の講師を務めました。

名古屋市の約200名の保育士の方々に、保育リスクマネジメントのお話をさせていただきました。(2016.8.24)






碧南市広報に掲載されました。


碧南市の医師会、歯科医師会、薬剤師会と行政が一体となった「碧南市健康を守る会」の総会で、代表の鷲津秀樹が講演させていただいた内容が、碧南市の広報で紹介されました。
https://npo-jisedai.org/hekinan.pdf






稲沢市広報に掲載されました

稲沢市の「いじめ・不登校対策委員会」主催の稲沢市の小中学校の先生方の研修会で、 『ネット・スマホ依存』について講演させていただいた内容が、稲沢市の広報で紹介されました。
https://npo-jisedai.org/27inazawa.pdf






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