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子どもに怒りを感じた時の対処法(アンガーマネジメント)

子どもにイライラしたり、腹立たしく思うことって結構ありますよね。 だから、『叱り方』を是非知りたいというお母さんの声をよく聞きます。

もちろん、上手な叱り方というのはある程度パターンがわかっています。 ただその前に考えていただきたいのは、イライラしたり腹立たしく思う時って『〇〇してほしいのに、〇〇してくれなかった』、若しくは『△△してほしくないのに、△△した』という場合が殆どなんですね。

「という事は、順序として、まずは叱るのではなく『〇〇してほしい』とか『△△してほしくない』ということを、子どもがわかるようにはっきりと伝えるのが大事ですよね。

つまり、親の考えが子どもに明確に伝わっているかどうかの確認が大事ということです。
できたらこれは、文として書いておいた方がいいですね。
そして、それでも言うことを聞かなかったら、そこでいよいよ『叱る』という行動の出番となるわけです。

ところで、伝えてもなかなかやってくれないのが、子どもなんですが、でもどうしてやってくれないんでしょう?

これをお母さんやお父さんや先生に聞いてみると、多く返ってくる答えがこれです。
「面倒だからじゃないですか?」


そうなんですよね。 そのとおりなんです。 お母さんもお父さんも先生も、よくわかってるんですよね。
それなのに、どうしてそういう時に「何でやらないの!」って怒るんでしょうね(笑)。


「何でやらないの!」

(面倒だから)

…なんです。ただ、これを声に出して言うともっと怒られるから言わないだけで。

つまり、意味がないことを言ってお互いが不愉快になっているんですよね。

だからそれよりも、『面倒な事をやったら、その面倒さを上回る【得をする】システム』を作った方が早いんです。
逆に言うと、『やらないと、得られるモノが得られなくなってしまうシステム』ですね。
これが【効果的な対処法】なのであって、それを具体的に考えていくのが大事なんです。

でも、お母さんにこうやって言うと、黙り込んじゃう方が多いんですよね。
たぶん面倒なんでしょうね(笑)。

もちろん、『面倒な事をやったら、その面倒さを上回る【得をする】システム』を考えるなんて、確かに面倒なことだと思います。
でもよく考えてくださいね。

『子どもに面倒なことをやってもらう』んでしょ?
親がめんどくさがっていちゃ、話にならないって気もしませんか?

「叱り方」

ところで、実は『怒る』とか『叱る』というのは、人の行動を変えさせたい時、または人をコントロールしようとする時に一番手っ取り早い方法なんです。 つまり『面倒ではない』簡単な方法なんですね(だからみんなそっちに走るんですけど)。

でも、簡単なだけあって、いろいろなデメリットを持っています。
例えば叱られる方から言うと、『叱られる』というのは『褒められる』よりも、慣れやすいんです(馴化しやすい)。
最初のうちは聞いてますけど、何回目かになると、もう聞いていないですもんね。
右の耳から左の耳へ…。

また、『叱る』というのは『期待した方向に進まない』場合が結構多いんです。
例えば『寝る前に歯を磨く』ようになってほしかったとしますね。
この場合、磨かなかった時に叱るとします。
そうすると、歯を磨くようになってくれればいいのですが、磨いたふりをするとか『叱られないように努力する(誤魔化す)』場合があるんですね。
そんな努力をする暇が有ったら、磨いてくれればいいのにと思うんですが(笑)。

そして、もう一つ厄介な問題が有ります。
『叱る』と、【その事が嫌いになる】ことが多いんですね。
『歯を磨きなさい!』って叱ると、歯を磨くことが嫌いになる子が多いんです。


でも、だからといって『叱ることはいけない』というわけではありません。
やっぱり叱らないといけない時だってあります。

例えば【健康】と【安全】に関わる時がそうですよね。
今、問題となっているスマホ・ネット・ゲーム依存なんていうのは【健康】にとっての一大事ですし、小さい子の場合だと近所で遊んでいる時に道路へ飛び出したりした時とかは、当然厳しく叱らなければいけません。

ただ、そういう場合において大事なのはルールを作ることなんですね。
そうなると、まず第一に考えないといけないのは、【ルールの明文化】です。
例えば、日本という国で考えると憲法が有り、刑法が有り、民法や商法がありますよね。 そしてそれに反するとその法律に明記されている量の罰が与えられます。

つまり、どういう事をしたらいけないか、またそれをするとどういう罰が与えられるかをはっきりしておく必要があります。
その時その時の親の気分しだいで罰を変えてはいけません。
また、その罰も合理的なものでないといけません。

『叱る』には【明確さ】が必要です。
そして、それが出来ていると、意外と子どもって、叱られても納得してくれるものなのです。

ただこれについては大事なことが一つあります。
レディネスの問題があるのです。器(うつわ)の問題と言ってもいいでしょう。

例えば算数をやるには、数字というものの概念が既に無ければ無理ですよね。それと一緒です。
器がまだ出来ていないと、いくらルールを作ってもうまくいかない場合が有ります。

『人に迷惑をかけない』というルールを作って明文化したとしても、5~6歳にならないと、この概念は子どもにはわかりません。
3歳の子どもに、いくら『人に迷惑をかけてはいけない』と叱っても、無理があるということなんです。

それと、もし子どもを叱った場合は、できるだけそれをノートか何かに書き留めていくことをお勧めします。
『怒った事ノート』ですね。
ノートに書いて、たまに内容を整理していただくと、気づく事がとっても沢山あるはずです。
また、それを系統立てていくと知らないうちに『叱るのが上手』になっていきます。



怒りを感じた時の対処法「セルフコントロール」

まずは、よく言われているアンガーマネジメント(怒りの制御)の方法をご紹介します。

・怒りのピークは6秒間。
 したがってその6秒間怒りを抑えることができればよい

・変えられることと、変えられないことがあると自分に言い聞かす

・怒りの内容を書き出す
 それによって客観的に考えることが出来、行動を改善しやすい

・コミュニケーション・スキルをUPさせる


また、アンガーマネジメントには、よく【認知行動療法】が用いられます。

下記の思考パターンを変容させる

べき主義
 「~であるべき」を「~であるにこしたことはない」と変える

完全主義
 完全にこだわらない 白か黒かの二分思考に嵌らない

過度の一般化
 「いつも」「みんな」など、一つのことを全てにあてはめない



あとは【リラクーゼーション】も薦められることが多いですね。

・散歩・深呼吸・軽い体操などリラックスできることをする。

・好きな音楽や心が落ち着く音楽を聴く

・アロマテラピー(ラベンダー等)


怒りをもう少し深く分析すると…

ということで、一般的に言われていることを書き出しましたが、ここからはもう少し深く掘り下げてみましょう。

まず、よく言われている「怒りの分析や対処法」というのは、主に『人間と言う知的な脳だからこそ起きる怒り』についてのものが多いんですね。

べき主義』から来る怒りなんていうのは、それぞれの人に『常識』とか『良識』という大人の人間ゆえのルールがあり、それが破られたと感じた時に湧き出るものですし、『完全主義』から起こる怒りもその類でしょう。

でも、実際問題としては、もっと本質的な『幼児的な怒り』というのも多いんです。

ただ、我々は大脳が発達したおかげで、いろんな理屈を考えることができる為、感情(幼児的な怒り)の上に理屈を乗せて表現することが多いんですね。


上記の
『怒りは二次感情である。従って不安恐怖淋しさなどの一次感情に気付くことが大事』
というのは、この話となります。

ちなみに、コミュニケーション・トレーニングやコーチングで言われるところの『You(ユー)メッセージをI(アイ)メッセージに変えよう』というのも、この話です。

不安恐怖淋しさから出た怒りを相手にぶつける時に、『You(ユー)メッセージ』なっているということです。

『You(ユー)メッセージをI(アイ)メッセージに変えよう』というのは、「 You should(must) 」を「 I wish 」に、つまり「あなたはこうすべきだ」を「わたしはこうしてほしい」にしましょうね、ということであって、実は大事なのは『ユー』や『アイ』という主語よりも、『 wish(自分の欲求) 』を、相手に対して『 should(べき)』と強制してしまいがちだという問題についての対処法だと言えますね。

さて、『 should(must)』を『 wish 』に変えればいいのだと言っても、実際はこれはそんな簡単なことではないんですね。

なぜかというと、我々は子どもの頃から長い時間をかけて、親や先生や周囲から禁止や命令を受け、いろいろなルールを頭の中に刷り込まれています。

そしてそれによって我々の『 wish(欲求)』は、心の奥深くに抑圧されてしまったり、極端な場合はヨーイ・ドンの時点で抹殺されてしまったりする場合が多いんですね。

しかもその過程は、無意識のうちに行われていますから、我々は意識としては知らない間に抑圧されてしまっているということなんです。

だとすると、まずは心の中にある刷り込まれたルールがどういうものなのか、そしてそれによって欲求はどのように抑圧されていたり、捻じ曲げられているかを知らないと、お話になりません。

だから、本当はまずは自分の欲求(wish)をしっかりと自覚しないといけないってことなんですね。



一般的なアンガーマネジメントが上手くいかない?

ところで、心理カウンセリングに来られる方の中には、本を買ったりセミナーに行ったりして一般的なアンガーマネジメントを学んだけれど、結局上手くいかないという人も多いんですね。

実は、脳のタイプによっては確かに一般的なアンガーマネジメントの方法が通じにくい場合もあるんです。

例えばADHD(注意欠如多動症)の傾向を持っている人(特に多動・情動タイプ)や、そのグレーゾーンではないかと思われる人。

このタイプの問題点は、とにかく『待てない』ことなんですね。

待たされるとイライラが昂じ、元々脳の制御を担うところの力が強くないということもあり、怒りが爆発しちゃうわけです。

「6秒間怒りを抑えることができればよい」なんて言われても、それが出来たら苦労はないんですね。
だって、脳の情動系が活発で、制御系が不活発という構造なんですから。

逆に、そういう脳だから芸術に優れていたり、創造力が優れていたりということも多々あるので、これは本当に難しいですね。

要は得手不得手が極端で、その不得手の最たるものが『待つこと』なわけです。
そんな人に「6秒間待て」と言ったって、そう簡単にできるわけがありません。

生まれつき足が遅い人に、「速く走りたかったら速く足を動かせばいいんだよ」とアドバイスしているようなものです。

他にも、アスペルガータイプや、そのグレーゾーンの人は「正しい・間違い」とか「ルール」についての過度のこだわりなどが有るので、やはり怒りの制御は難しいですし、情景や場面などの記憶がすごくいい場合も多いので、以前のことがフラッシュバックして、それで激怒するケースも珍しくありません。

もし、一般的なアンガーマネジメントが上手くいかないと悩んでおられるなら、タイプの問題ということも考えて、自分に合ったアンガーマネジメントの方法を工夫するのも一つの方法だと思いますし、発達障碍の知識は身につけておいた方がいいでしょう。

また、発達障碍は遺伝の傾向がありますから、親が発達障碍の傾向がある場合は、子どももそういう傾向を持っていることが珍しくありません。

そして、その場合は『育てにくい子』のケースが多いので、親は益々怒りが発生しやすいということになってしまうんですね。

お薦めの対処法は【応用行動分析(ABA)】


上手くいかない為に怒りが起きるのですから、怒りが起きないようにするには、子育てが上手くいけばいいわけです。

では、上手くいく方法はというと、これはやっぱり応用行動分析(ABA)だと思います。

上記の発達障碍においても、応用行動分析は大変効果が有ります。

応用行動分析は、当NPO日本次世代育成支援協会協会の「応用行動分析(ABA)のページ」a href="https://npo-jisedai.org/aba.htmlを是非ご覧ください。





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この内容はNPO法人日本次世代育成支援協会の心理カウンセラー養成講座の講師を担当している鷲津代表が、愛知大学OCでの講義で行った内容を元に書かれています。
著作権は出版をしている合同会社ベルコスモ・カウンセリングにあります。無断使用、複写、転載はできませんのでご注意ください。

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 http://npo-jisedai.org/kouza.htm



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テーマ「コロナ禍が及ぼす子どもたちの心への影響と、その対処法」
講師 NPO日本次世代育成支援協会代表 名城大学非常勤講師 鷲津秀樹
対象 保険医協会会員の医師歯科医師 学校教諭、保育士、一般市民


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鷲津代表の内容は「コロナ禍が及ぼす子どもたちの心への影響と、その対処法」です。







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