自暴自棄的無差別殺傷事件を考える 強い閉塞状況の中で、自暴自棄や自己破壊的な行動を取る心理

自暴自棄的無差別殺傷事件
見ず知らずの人をいきなり刃物などで刺し、死亡させたり重症を負わせる事件が絶えません。

これらの犯罪を行う者は、凶悪に見えるわけでもなく、犯罪を重ねているわけでもないケースが多いのです。
また、何か予兆があったわけでもなく、突然事件を起こすというのも特徴の1つです。
4半世紀前の「いきなり型非行」
話は4半世紀前に戻りますが、1998年に栃木県で男子中学生が教師を刺殺した事件がありました。
そしてその後も中高生による殺傷事件が続き、警察庁は「普通」の少年が突然凶悪な犯罪へと一足飛びに進んでしまうものを「いきなり型非行」と命名しました。
これについて、孫引きとなってしまいますが宮下一博千葉大学教育学部教授は著書「キレる青少年の心」でこのような引用を載せています。
「いきなり型非行」のような少年事件の特徴
1.加害少年が「ふつう」と形容される少年であること
2.非行化原因の特定が困難であること
3.行動が突発的で前兆的行動の認めにくいこと
4.事件の結果がしばしば決定的で回復不可能であること
5.被害対象が不特定で、時として少年たちの権威対象でさえも被害化すること
(1999年「現代少年非行の世界-空洞の世代の誕生」清永賢二編)
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自分を被害的に認知しており、怒りを鎮めてくれる対象をもっておらず、孤立無援の状態である。
非行文化にもなじめず、異性に依存するほどの社会性もない彼らは、強い閉塞状況の中で、自暴自棄や自己破壊的な気持ちを増幅させている。
(1998年「世代間の問題としての少年事件」村松励著)
以上引用文

ひょっとして、「孤立無援の状態で非行文化にもなじめず、異性に依存するほどの社会性もない」少年が、「強い閉塞状況の中で、自暴自棄や自己破壊的な気持ちを増幅させ」続けていたとしたら…。
今のこの不気味な社会不安は、何も手を打たない限り続く可能性が高そうですね。
なぜ自暴自棄的無差別殺傷?
さて、我々人間は何か事が起きると「原因探し」に走りたくなります。
なぜ、そうなったのか?
少子化、核家族化、人間関係が年々薄くなっていったこと、etc etc…。
いろいろとあるでしょう。
ただここで気になることがあります。
警察庁が「いきなり型非行」と命名した4年後の2002年に、森昭雄日本大学教授が「ゲーム脳の恐怖(NHK出版)」を出版し、ゲームによる脳(特に眼窩前頭皮質)の劣化を訴えたのです。
しかし当時は反論も多く、「全くの迷信、妄想だということがわかってきている」「テレビゲームにより脳が壊れることは100%ない」と断言されたりもしていました。
ところがその後2016年には、批判していた先生方も「長時間のビデオゲームは小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能に悪影響を及ぼす」と発言し出し、今では長時間のゲームは前頭葉に悪影響を与えるというのは最も有力な説です。
さて、ここで特に問題となっているのが、眼窩前頭皮質の劣化です。
眼窩前頭皮質は攻撃性制御、人格、道徳、社会性、後悔、楽しみや喜び、他者の気持ちの理解等などに関わる領域で学習、記憶に関わる様々な領野とつながっていると言われています。

孤独でネットやゲームの中にしか居場所がない毎日を続け、「攻撃性制御」や「人格、道徳、社会性」が低下したらどうなるか…。
もちろんここに書いたのはあくまでも仮設ですが、これを自暴自棄的無差別殺傷に結び付けるのは乱暴でしょうか。
人間にとって大きな問題となってしまうのが2つあります。

【つまらない】とか【退屈】は、人生の大敵なんですね。
つまらないから不登校になる。
つまらないから学校をやめる。
つまらないから会社をやめる。
つまらないから離婚する。
つまらないからネットに嵌る。
つまらないからゲームをやる。
つまらないからパチンコに行く。
つまらないからお酒を飲む。
つまらないから薬物に走る。
そして、つまらないから生きててもしょうがないと思う。
人生の大敵のもう1つは、【さびしい】こと。

ところが中には、この潤滑油の出し方を知らなかったり、脳の特性上あまり出せなかったりする人がいます。
潤滑油が無いと、自分も傷つき相手も傷つきます。
その場合、一人でもできる飲酒やギャンブルに向かったり、自分の思い通りになるネットやゲームなどのバーチャルな世界に逃げ込んだりして、傷ついたり傷つけて反撃される可能性のある対人関係を避けてしまいがちです。
結果、孤独が進み、その世界からますます抜けられなくなってしまうのです。
つまりゲーム依存であれ、ネット依存であれ、ギャンブル依存であれ、アルコールや薬物依存であれ、『依存』に嵌ってしまう人は、この【つまらない】と【さびしい】の2つを抱えている場合が殆どなのです。
従ってこの問題は、単にスマホやお酒やパチンコ店から隔離すればいいというものではありません。
さて、下図をご覧ください。

上記のような精神障害として認定されているような依存というのは、図の転がり落ちてくる大きな鉄球のようなもので、なかなか一人では食い止められないし、また逃げようとしてもどこかの段階で落とされてしまいます(事件というのは、この図の崖から落ちた時を表しているのかもしれません)。
しかし…。

上図のように1人では食い止められなくても、何人かで力を合わせれば食い止めて、鉄球を脇にどけることができるのです。
もっとも、この「依存」という鉄球は雪だるまのようなもので、時間が経てば経つほど転がりながら大きくなっていくものです。
早期の段階ならそんなに苦労なく手伝えるのですが、時が進むとカウンセリングでも何ともならないこともあります。
そして問題は、『本人はカウンセリングに来たがらない』ということと、『回避』に対応できるスキルを持った人間が少ないということです。
このあたりを社会の問題として、できるだけ早く考え、対処法を確立していく必要を感じます。

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場所 豊橋商工会議所 3階ホール
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